患者様の死に直面しても

看護師に必要なのは肉体的な体力だけでなく、精神的な体力も必要となります。少々のことではへこたれない、心の体力が必要なのです。看護師の仕事が肉体的に辛いのはよく知られたことです。しかし、心の面でも強くなくてはやっていくことはできません。心の体力とはどういうことなのでしょうか。
看護師という仕事は常に病気の人と接することとなります。そして、その患者様が必ず全快して退院するというわけにはいきません。年に何度かは患者様の死に直面しなければならないことがあります。患者様のためを思って看護をしていればしているほど、患者様の死というのは辛くなります。まるで身内の死のように感じることもあります。その際に、落ち込まずにいられるかどうか。もちろん落ち込んでも構わないのですが、それを引きずってはいけません。患者様はたくさんいます。どの患者様にも平等に接しなければなりません。ひとりの患者の死は重たいものです。しかし、その死に引きずられて、他の患者様の看護に影響がでるようではいけません。
だからといって、簡単に割り切れるものでもありません。まるで家族の死のように感じられる、患者様の死。それを軽く受け流すことなどできません。どうしても心のどこかに引っかかって、日常と同じように振舞うというのは難しいかもしれません。それでも、それが分かった上で、日常的に振舞わなくてはならないというのが看護師の仕事なのです。その相反する感情といかにうまく折り合いをつけてやっていくのか、そういった意味で、看護師は心の強さや体力が必要となるのです。
看護師も人間です。人の死は辛いものです。簡単に割り切ることなどできません。また、人間であるからこそ、プライベートでも辛いことがあるでしょう。しかし、それを職場に持ち込むことは避けねばなりません。いくらプライベートで辛いことがあったとしても、患者様の前ではいつもの笑顔を見せなければなりません。それがどんなに辛いことでも患者様に悟られてはいけません。患者様に気を遣わせてはいけません。患者様の前では変わらぬ態度で接しなければならないのです。
そういった面でもかなり心の体力が必要となります。ちょっとしたことで(ちょっとしたことではないかもしれませんが)仕事に影響が出るようではいけないのです。強い心を持って仕事に臨まなくてはなりません。肉体的な体力と同等か、それ以上に心の体力は看護師にとって必要なものであると言えるでしょう。